三交代

定修とは?化学プラントの製造オペレーターが解説します

定修を8回以上経験している現職の製造オペレーターが定修について解説します。

定修という言葉自体、あまり馴染みがないと思うのでなるべくわかりやすく解説するので、参考にしてください。


定修とは

定修とは、定期修理の略です。

定修では、プラント(工場)の設備の点検、修理を行います。

修理するプラントの設備は、高所にあったり、溶接が必要だったり、配管を切断しなければならない場合がほとんどです。

また、大きなプラントは、修理する箇所が多く、配管の切断や溶接は、専門技術が必要なのでプラントの製造オペレーターだけでは、定修をまかないきれません。

なので、定修では、普段プラントに出入りすることがない外部の工事業者の人に協力してもらって作業します。

定修で関わる人たち

  • 高所作業をする足場を組み立てる業者
  • 溶接工
  • 解体業者
  • プラントにある設備のメーカー担当者

などが定修でプラント内の設備の修理や点検を行います。

定修の目的

定修の目的は、おもに下記の2つです。

定修の目的

  1. 設備のトラブルを予防する
  2. プラントを安全に稼働させる

プラントは、トラブルなく24時間フル稼働させた方がお金がかかりません。

故障などのトラブルでプラントを停止しなければならないことが年に何回も起こると、それだけランニングコストがかかります。

プラントの設備は、使っていると劣化して故障の原因になるので、ざっくり言うと、

「いっそのことプラントを停止させて一気に修理してしまえ!」

というのが定修の目的です。

定修の期間

定修は、年1回おこなわれます。

定修には小定修と大定修の2種類があり、1年ずつ交互に行います。

大定修と小定修の違い

大定修と小定修の違いは、定修がおこなわれる期間が長いか短いかです。

  • 大定修約1か月
  • 小定修約1~2週間

 

定修でやること

定修はどんなことをするの?定修では、下記のような作業がおこなわれます。

プラント設備の点検

プラントが稼働しているときにできない設備の内部の点検や法律で定められた年1回絶対にやらなければならない点検など、プラントが停止している時しかできない点検をおこないます。

劣化した配管や設備の交換

これ以上稼働を続けたら故障しそうなプラントの設備や劣化して漏れそうな配管を交換します。

プラントの設備は、大型のものが多いので、レッカー車やクレーン車で設備を新しいものに交換する場合もあります。

プラント設備の洗浄

プラントを稼働し続けて設備内に溜まった汚れを洗浄する作業をおこないます。

人の手に負えないものは、薬品で洗浄したりジェット洗浄装置やバキューム車で汚れを取り除きます。

プラント設備の改造

プラントをより安全で効率的に稼働できるように設備を改造をおこないます。

改善するつもりでやったのに結果的に改悪になる場合もあります。

定修でプラントの製造オペレーターがやる仕事内容

定修の工事で配管の溶接や切断の作業は、外部の工事業者がおこないます。

製造オペレーターは、外部業者がする作業の安全を確保が定修でのメインの仕事です。

工事箇所の安全確認

プラントの配管の溶接や切断の工事をする場合は、配管内に可燃物などがないか確認します。

定修の前準備でプラントの配管は、カラの状態にしますが、工事箇所が安全に作業できるかを製造オペレーターが最終確認します。

工事の立ち会い

外部の工事業者が工事するのを立ち会って安全に作業しているかを監視をします。

立ち会いの目的

  • 工事箇所が安全な状態か確認する
  • 工事業者が安全に作業しているか監視する

などがあります。

立ち会いをする時は、製造オペレーターが作業をすることはありません。

工事が安全な状態が確保できていれば、ぶっちゃけ、ただ突っ立っているだけです。

定修でキツいのは下請け会社や工事業者

定修でキツいのは工事業者

定修での製造オペレーターの仕事は、前述した通り、工事箇所の安全確認や工事の立ち会いなので、体への負担が少ないです。

定修で一番キツい作業をするのは、工場の下請け会社や外部の工事業者です。

下請け会社や工事業者が定修でキツい理由

  • 定修の期間内に工事を完了しなければならない

    期間内に工事が終わらないとプラントの生産計画にも関わるので、定修期間内に必ず工事を終わらせるために泊まり込みの作業や徹夜での作業をすることもあります。

  • 突発で追加の工事を依頼される場合がある

    前もって定修で工事する箇所を計画しますが、定修になって気づく不具合箇所も出てきます。追加で依頼されることにも対応しなければなりません。

  • 製造オペレーターの人数が少なくて立ち会いで待たされる

    工事を進めるには、製造オペレーターの立ち会いが必要です。大きなプラントほど、工事箇所が多くなり、1つ1つの工事に製造オペレーターが対応しきれない場合は、工事が始められなくて待たされることがあります。

工事業者にとって定修は、稼ぎどきでもあります。

全国にあるコンビナートによって定修の時期が異なるので、全国のコンビナートの定修を移動しながら請け負う工事業者もあります。

そういう工事業者は、人手不足の状態になりがちなので、未経験者でも定修要員として求人している場合が多くあります。

製造オペレーターがキツいのは定修の前後

製造オペレーターが1年で一番キツい時期が定修の前後のプラントの停止と立ち上げ作業です。

製造オペレーターは、定修の前後で下記のような作業があります。

定修前のオペレーターの仕事

  • プラントの停止
  • プラント内の可燃物除去

プラントを停止したあとに、安全に定修ができるようにプラント内の可燃物を除去します。

大きなプラントの配管を1本1本確認しながら可燃物を除去しなければならないので、気を使います。

定修後のオペレーターの仕事

  • プラント設備の試運転
  • プラントの立ち上げ

定修後にプラント設備が正常に作動するかをチェックしてから、プラントの立ち上げの準備をします。

カラの状態のプラントに原料を仕込むことから始めるので、時間がかかります。

プラントの立ち上げも安全に細心の注意を払いながらおこなわなければならないので、神経がすり減ります。

うまくプラントが立ち上げできない場合もある

定修後のプラント立ち上げは、細心の注意を払いながらおこないますが、人間誰しもミスや抜けがあるものです。

すんなりとプラントの立ち上げができない場合もあります。

せっかく立ち上げたばかりのプラントがしばらくして不具合で停止させなければならない場合もあります。

立ち上げたばかりのプラントをすぐに停止しなければならないことは、製造オペレーターにとって精神的に一番ヘコみます。

わたしも定修後のプラント立ち上げで何度か経験したことがあります。

まとめ

定修についてざっくり解説しました。

プラントに関わる人にとって1年で最も忙しいのが定修の期間です。

これから初めての定修に関わる方は、くれぐれも安全を最優先に作業してください。